浮舟 ― 2023年11月25日 23:17
明治 20 年末頃 で、最初期の作品である。
土佐派の書法で描かれている。春嶺は谷口香嶠のもとで土佐派を学んだと浪華滴英は伝えているが、実際に香嶠塾での模写帖もあり、多くのことを学んだと思える。(ここで言うところの土佐派は、室町時代から続く大和絵の土佐派の流れを汲む画面を描く流派との意味であり、谷口香嶠は土佐派の描き方をマスターしていたと意味で、当然ながら美術史の土佐派ではない。ただ明治での画家の分類では土佐派という言葉が使われていたことも事実である。)この浮舟図は、源氏物語の浮舟の帖で、匂宮が浮舟の姫君を小舟に乗せて対岸の山荘に誘なう場面であり、桃山から江戸時代の土佐派の画家による作例が幾つかある。(そしてこの春嶺作の浮舟図は殆ど土佐派の画家の模写に近い)。浮舟の帖の本文では、かなりの雪が積もった冬で、有明の月が掛かっている事になっていて、橘の小嶋の和歌が詠み交わされることになっている。多くの絵巻もそれらの寂しく不安な情景を踏まえたものである。春嶺のこの作例では、満月であり雪もなく、広い空間構成で、おおらかな印象になっている。最初期の作品であるが、背景の構成は春嶺の好みに合わせて描かれている。
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